古代エジプトに存在した「神殿娼婦」についてヘロドトスは記述する、歴代のファラオは積極的に自分の娘をイシス女神の神殿に「巫女」として差し出したという。当時の巫女は遊女でもあり、旅行中の男たちに身を任せて金をとった。ピラミッド建設で知られるクフ王は、巨大なピラミッドを建造する為に娘達に売春をさせ、その報酬を建造費に充てたと云われる。「神殿売春」は、古代には各地で行なわれていたが、やがて神聖な宗教的な意味が失われ、単なる嫁入り持参金を稼ぐ為に結婚前の娘達が"売春をする”ように変わって行ったと云う。
  バビロンのイシュタルの神殿を初めとして多くの聖地や神殿には「神の家」が存在した。ギリシャの歴史家ヘロドトスは、著書「歴史」の中で「神の家」で素人女性達によって行われた「聖婚」や「神殿売春」の慣習を伝えるがその後、「神殿売春」は「巫女」という女神に仕える専門女性にとって代わられる。古代の巫女達は、寄進を受けた者達に神の活力を授けるためにセックスの「お持て成し」を行い、神が巫女を授けて寄進者や参拝者をもてなしたので在る。「神の家」はそんな参拝者を慰める場所でも在ったという。
  「ギルガメッシュ叙事詩」には、友人エンキドゥの獣性を鎮める為に娼婦を派遣して性交渉を行わさせたと云う記録があり、当時の買春行為は現在とは違う神聖な儀礼で在った事を知る事が出来る。古代メソポタミアの女神イシュタルや古代ギリシアのアフロディーテ、北欧神話のフレイヤなど、多くの神話に詠われる愛と美を司る女神様達は、奔放な性行為を行ったと描かれるが、神殿娼婦の影響によるもので在ると考えられる。
  インドに今も、現存する「デーヴァダーシー」と呼ばれる「巫女」は、「神の召使」を意味する。彼女等は、バラタ・ナーティヤムやオリッシーといったインドの伝統舞踊を伝えてきた女性達であるが、一方で神殿売春、ヒンドウー教で規定される上位カーストや土地の有力男達を慰める事つまり、彼等の神への参拝に対する神からの下されもの、聖婚因習の被害者としても知られている。この風習は、一九八八年にインド国内で法律によって禁止されたが、彼女等を救済する事は為されず、禁止も強制力を及ぼさない事から現在もなお続けられているという。「デウキ」とはネパール西部に残るヒンズー教の神殿娼婦である。同じヒンドウー教のバリ島には此の風習は無い。
  此の様に、世界各地には神に仕える「巫女」という云う名の「神殿娼婦」が神を慰め、神官に奉仕し、寄進者や祈祷者にセックスで報いるという形の売春が行われていた。神に対する神聖な行為が神殿売春の原型と為り、当初は、国民全ての義務で在った「神殿売春」という制度は次第に、専用の女性が神殿で女神に勤める事と為り、神殿売春が売春専門家「巫女」にとって代わるので在る。
  此の様に、世界最古の歴史を刻んだとされるメソポタミアを始め、世界の古代を彩った文明には早くから所謂、神代の昔から神に仕える女性として神殿に「巫女」という女性が生まれた。彼女達「巫女」が神に奉仕する「神の館」と呼ばれる慰安所では「聖婚」或いは、「神殿売春」と呼ばれる神から寄進者や祈祷者、神官達等へ「お持て成し」が下げ与えられたので在る。

「屁放き爺さんのスケベ噺」巻3-(2)

「神殿売春U」 "愛の神様御供わせ”

ー各地の女神様ー

  古代メソポタミアで生まれた「神殿娼婦」は、愛と豊穣の女神ミュリッタを崇拝する制度で在ったが後に、エジプトを始め、地中海東部の各地方にも広がった。古代の都市国家や統一国家においては、国力=人口という概念が在り、多大な人口を養う為には、広大な農地と多くの生産人口、高い農業生産が必要で在った。メソポタミアでは、大地の女神を敬うことが積極的に求められたので在る。大地の神で特に、有名なのはバビロニアのイシュタル女神とエジプトのイシス女神、ギリシャのアルテミス女神で在る。人々は豊穣を願い、大地からの農産物を女神の神殿に献げ、人口を増やす行為つまり、生殖活動を行わねば為らなかったので在る。
  古代ギリシャでも、女性は一生のうち一度は神殿で女神アフロデイテに仕えなければならなかった。つまり、ギリシャの女性は一度は娼婦の仕事をする事が義務付けられていたのである。古代ギリシャの都市国家の一つ、コリントスのアクロポリスに建てられていたアプロディーテー神殿が有名であった。

「閑爺さんエロ噺」ー紅白衣裳の色気ー
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