株主代表訴訟 の改正は不要

大和銀行の株主代表訴訟で、取締役の不法行為や職務怠慢を認め、賠償金830億円の判決が下された。
この多額の賠償金に財界が緊張感を持ち、経営姿勢を正すことを期待したが、これに反し、財界の意を受けた自民党が、株主代表訴訟に制限を加えるべく、商法改正の動きが出てきたが、本末転倒ではないだろうか。

自民党の改正案では、賠償責任の限度額を役員報酬の2年分とすること、訴訟を起こせる株主は不法行為などのあった時点での株主に限ること、取締役への支援を会社が出来るようにすること、などである。
しかし、これでは株主代表訴訟が事実上機能しなくなってしまう。
すなわち、改正案の賠償額ならば会社負担の保険でカバーでき、取締役は責任が回避できること、会社の損害を最大限回復させるこの制度の目的に対し、限度額を設定する合理的根拠がないこと、被害者である会社が加害者の取締役を支援する矛盾、などがある。

一方、現在の株主代表訴訟の利点は、大和銀行判決以後、経営者が常に緊張感を持って経営にあたり、会社の私物化や不法行為の防止、そして無責任経営の排除などが期待できる。
その結果、会社や株主、従業員や消費者などにも恩恵を及ぼすであろう。

多くの会社の株主総会が事実上機能せず、株主が軽視されている現在、この制度の改正は不要と考える。